2025年7月16日、金融庁が銀行業界に対して、オンラインや郵送での預金口座開設時に運転免許証の画像で行う本人確認を、できる限り早く廃止するよう正式に要請したことが明らかになった(出典:livedoorニュース)。
これは、2024年6月に改正された犯罪収益移転防止法(犯収法)によって、2027年4月から運転免許証画像による本人確認が原則として禁止されることを受け、前倒しでの移行を促すものだ。
特殊詐欺対策としての本人確認強化
金融庁が前倒しでの対応を要請した背景には、偽造された運転免許証を使って開設された銀行口座が、特殊詐欺やマネーロンダリングに悪用されるケースが相次いでいるという現状がある。
犯収法により本人確認の厳格化が求められる「特定事業者」は、銀行だけでなく、証券会社、クレジットカード会社、保険会社なども含まれる。金融庁は今後、これらの業界に対しても幅広く周知・指導を行う見込みだ。
マイナンバーカードによる本人確認への移行
金融庁は、なりすまし防止機能が高いマイナンバーカードのICチップ読み取りによる本人確認を新たな標準とする方針を明示した。
「成り済まし防止機能が高いマイナンバーカードの活用を促す」(livedoorニュース)
従来の本人確認方式では、口座開設時に運転免許証の画像をスマートフォン等で撮影・送信する「ホ方式」が主流であったが、これは偽造や流用のリスクが大きい。これに対して、マイナンバーカードのICチップを読み取り、暗証番号で認証する「ワ方式」は、偽造が極めて困難でセキュリティ性能が高い。
銀行業界の従来運用と転換の必要性
これまで銀行では、店舗での対面による口座開設が多く、行員が運転免許証などを直接確認して本人確認を行っていた。この「対面運用」がそのままオンラインに持ち込まれ、免許証画像による本人確認が導入されたが、犯罪リスクに耐えられなくなった。
「銀行業界では従来、口座開設の手続きを店舗で行う客が多く、行員が窓口で身分証の提示を求め、本人かどうかを確認していた」(四国新聞)
今回の金融庁の文書では、「可及的速やかな対応」を明記しており、今後各行が早期に対応を迫られる。
実務的課題と今後の展望
- マイナンバーカード対応のシステム導入には、時間とコストがかかる。
- 金融機関によっては、本人確認手続きの簡素化と安全性の両立を図るための技術的工夫が求められる。
- 対象外の高齢者・未取得者への配慮として、住民票原本やパスポートなどによる代替案の整備も同時に必要となる。
一部の識者からは、コスト負担が最終的に利用者側へ転嫁される可能性も指摘されている(news-free.jp)。
本件の意味するもの
今回の金融庁の要請は、単なる技術的アップデートではない。日本の金融インフラ全体が、より安全で信頼性の高い本人確認基盤へと転換することを意味する。マイナンバーカードの普及は、今後の金融取引、行政サービス、医療情報管理など、あらゆる分野において中核となっていくだろう。