日本以外に「姓-名」を使用する国はあるが、いずれの国も、英語表記の場合、「姓-名」を使用しており、そのような状況もあり、日本でも、「姓-名」の順序で使用する流れが進んでいる。
「姓-名」順序を使用する国
中国、韓国、北朝鮮、ベトナムが「姓-名」を使用する国であるが、英語表記の場合、「姓-名」を使用していた。
(例)
- 中国 主席:習近平 Xi Jinping
- 韓国 大統領:尹錫悦 Yoon Suk Yeol
- 北朝鮮 国最高指導者:金正恩 Kim Jong Un
- ベトナム 国家主席:グエン・スアン・フック NGUYEN Xuan Phuc
国語審議会の答申(2000/12/08)
平成12(2000)年12月8日 国語審議会の答申で、日本人の姓名のローマ字表記について、「姓-名」の順とすることが望ましいとされた。
しかし、この答申後、2019年の政府決定まで政府が「姓-名」を推進する様子は見られなかった。ただ、英語の教科書では、日本人名の「姓-名」の表記が2002年度以降、増えていく。(2001年度版の教科書には間に合わなかったものだと思われる)
(2)姓名のローマ字表記についての考え方
世界の人々の名前の形式は,「名-姓」のもの,「姓-名」のもの,「名」のみのもの,自分の「名」と親の「名」を並べて個人の名称とするものなど多様であり,それぞれが使われる社会の文化や歴史を背景として成立したものである。世界の中で,日本のほか,中国,韓国,ベトナムなどアジアの数か国と,欧米ではハンガリーで「姓-名」の形式が用いられている。
平成12(2000)年12月8日 国語審議会「現代社会における敬意表現」,「表外漢字字体表」及び「国際社会に対応する日本語の在り方」について(答申)
国際交流の機会の拡大に伴い,異なる国の人同士が姓名を紹介し合う機会は増大しつつあると考えられる。また,先に記したように,現在では英語が世界の共通語として情報交流を担う機能を果たしつつあり,それに伴って各国の人名を英文の中にローマ字で書き表すことが増えていくと考えられる。国語審議会としては,人類の持つ言語や文化の多様性を人類全体が意識し,生かしていくべきであるという立場から,そのような際に,一定の書式に従って書かれる名簿や書類などは別として,一般的には各々の人名固有の形式が生きる形で紹介・記述されることが望ましいと考える。
したがって,日本人の姓名については,ローマ字表記においても「姓-名」の順(例えばYamada Haruo)とすることが望ましい。なお,従来の慣習に基づく誤解を防くために,姓をすべて大文字とする(YAMADA Haruo),姓と名の間にコンマを打つ(Yamada,Haruo)などの方法で,「姓-名」の構造を示すことも考えられよう。
今後,官公庁や報道機関等において,日本人の姓名をローマ字で表記する場合,並びに学校教育における英語等の指導においても,以上の趣旨が生かされることを希望する。
2 姓名のローマ字表記の問題(2)姓名のローマ字表記についての考え方
政府決定(2019/10/25)
- 2020年1月1日以降、公用文等で、「姓―名」を使用することが決定。
- 地方公共団体,関係機関等,民間に対しても、差し支えのない限り「姓―名」の順を用いるよう,配慮を要請。
公用文等における日本人の姓名のローマ字表記について
公用文等における日本人の姓名のローマ字表記について(令和元年10月25日関係府省庁申合せ)
令和元年10月25日 関係府省庁申合せ
グローバル社会の進展に伴い,人類の持つ言語や文化の多様性を人類全体が意識し,生かしていくことがますます重要となっており,このような観点から,日本人の姓名のローマ字表記については,「姓―名」という日本の伝統に即した表記としていくことが大切である。 したがって,今後,各府省庁が作成する公用文等において,日本人の姓名をローマ字表記する際は,原則として「姓―名」の順で表記することとし,下記のとおり取り扱うこととする。 なお,本件の対応に当たりシステムの改修を要するなど,特別の事情がある場合は,当分の間これによらなくてもよい。
記
1 各府省庁が作成する公用文等における日本人の姓名のローマ字表記については,差し支えのない限り「姓―名」の順を用いることとする。
2 各府省庁が作成する公用文等のうち,次のものを対象とする。なお,国際機関等により指定された様式があるなど,特段の慣行がある場合は,これによらなくてもよい。
(1)各行政機関が保有する外国語(英語等)のウェブサイト,ソーシャルメディア
(2)外国語(英語等)で発信する文書(二国間・多数国間の共同声明等,白書,基本計画,戦略,答申)
(3)我が国及び各行政機関が主催する会議(公開)における名簿,ネームプレート等
(4)外国語(英語等)の文書(書簡,国際機関・相手国などに対し我が方立場を説明する資料,その他の原議書による決裁を要する文書)
(5)外国語(英語等)による行政資料等
(6)我が方大使の信任状・解任状の英仏語訳
(7)交換公文等の署名欄,国際約束の署名権限委任状の英仏語訳
3 各府省庁が作成する公用文等において日本人の姓名をローマ字表記する際に,姓と名を明確に区別させる必要がある場合には,姓を全て大文字とし(YAMADA Haruo),「姓―名」の構造を示すこととする。
4 地方公共団体,関係機関等,民間に対しては,日本人の姓名のローマ字表記については,差し支えのない限り「姓―名」の順を用いるよう,配慮を要請するものとする。
5 上記の内容は,令和2年1月1日から実施するものとする。ただし,各府省庁において対応可能なものについては,実施日前から実施することができる。
「姓―名」普及状況(2020年1月1日以降)
首相官邸ホームページ
首相官邸ホームページでは「姓-名」で表記。例「KISHIDA Fumio」。
ニュースサイト
まとめ
日本国内メディアには、「姓-名」表記が周知されているが、海外メディアに周知されている状況とはいえない。
- 「姓-名」→NHK
- 「名-姓」→CNN(米国)、BCC(英国)、朝鮮日報(韓国)
NHK WORLD-JAPANでは、「姓-名」で表記。例「Kishida Fumio」。
CNNでは、従来の「名-姓」で表記。例「Shinzo Abe」。
BCCでは、従来の「名-姓」で表記。例「Fumio Kishida」。
韓国 朝鮮日報の英語サイトでは、従来の「名-姓」で表記。例「Fumio Kishida」。
アメリカ政府
- 米国国務省、在日米国大使館は、「姓-名」で表記。
米国国務省では、「Hayashi Yoshimasa」と記載し、「姓-名」で表記。
駐日米国大使館では、「姓-名」で表記。「Abe Shinzo」。
国際オリンピック委員会
- 国際オリンピック委員会では、「姓-名」で表記。例「Narasaki Tomoa」。